魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 突如自分の元を訪れたヴェロニカを、自室にいた皇太子ディオニヒトが嬉しそうに出迎える。

「なにか急な要件でもあったのかな? それとも、私が君に会いにゆくのを待ちきれなくなったとか?」
「うふふ……もちろんその通りで御座いますわ。加えて、ちょっとした噂を小耳にはさみまして」

 配下に退室を命じ、ふたりきりになった室内でヴェロニカの腰を抱くと、ディオニヒトは早速軽く口付けをする。それに艶っぽい表情で応えながら、彼女はディオニヒトに問いかけた。

「最近、傾きかけていたボースウィン領が、大きく持ち直したそうで」
「ああ、そうらしいな。なんでも長らく臥せっていた領主の病が癒え、復興に向け、精力的に活動し始めたらしい。それに……領内に聖女が現れたなんて噂も聞いている」
「聖女……?」

 訝しげなヴェロニカの疑問に、ディオニヒトは呆れた様子で首を振った。

「ハッ、バカバカしい。なんでも突然現れたその女が領内に蔓延っていた瘴気を打ち払い、領主の病を癒してみせたのだとか。そのようなことができるほどの逸材が、あんな辺境に隠れているはずもない。そういえば、あそこの公爵家には精霊教会入りを突っぱねた娘がいたそうじゃないか。嫁入り前に箔でもつけてやろうと、大げさに吹聴しているだけだと思うがな……。どうした、なにか気になることでも?」
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