魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
『別に……。それにこれは当人同士の問題だろ。お前が気にすることじゃねーし、俺はこれからも仕事が詰まってんだ。話が終わったんならほら、さっさと部屋に戻れ』
『嫌です! ちゃんと私の目を見て話してください!』

 だがテレサは引かず、なおも正面に立って泣きそうな顔で俺の方を睨み続ける。

『私……お兄様が女の人と一緒にいて、これまであんなに幸せそうな顔をしてたのを見たことがありません! お姉様だってお店の方で、この城にいた頃よりずっと寂しそうな顔をしているんですよ。なのにどうして……ちゃんとふたりで話し合おうとしないんですか!』
『はぁ……』

 俺は大袈裟に溜め息を吐くと、机に頬杖を突きテレサをねめつけた。

『じゃあなにか? あいつをこれ以上、ボースウィン家のごたごたに巻き込もうってのかお前は。公爵家の責任ってのがどれほど重いか、お前だって知ってんだろ。その夫人ともなりゃ、領地中の令嬢どもの上に立つ立場で、帝国皇室との関わりすら出てくる。忙しい上に心も休まらねえ……そんな立場にあいつを追い込んでお前は満足か? あいつがそんな生活を好まないことくらい見てりゃわかるだろ……』
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