魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 優しすぎるあの娘は、きっと権威や利益に骨の髄まで毒された貴族共との関わりなど好まないだろう。なのにテレサは、そちら側にシルウィーを引き込もうとしている。それが俺には理解できない。

 そしてテレサも、なおも引き下がろうとはせずに、俺の説得を続けようとする。ここまでテレサが聞かん気を発揮するのは久々だ。

『そんなの……お兄様や私がいくらでも支えてあげれば済むことでしょう! そんなことよりも、愛する人の側にいられないことの方が、よっぽど辛いことに決まってます! お兄様は、シルウィーお姉様が他の人と一緒になって、仲睦まじく過ごされたり、お体に触れられてもなんとも思いませんの!?』
『それは――――勝手にすりゃいいだろが』

 一瞬言葉に詰まって俺が顔を背けたのを見逃さず、テレサはすぐに斬り込んでくる。

『シルウィーお姉様とルシドの仲は、着実に深まっていますわよ』
『ぐっ…………』

 俺は、思わず奥歯を噛み締めた。その胸中をつぶさに読み取ったようにテレサは、顔をツンと逸らして見下ろすように鼻を鳴らす。
< 330 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop