魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「お父上も、完璧なお人ではなかったそうですよ」
「……そうなのか?」

 興味を引かれた俺が足を止め振り返と、クラウスはしたり顔で笑って俺に教えてくれた。

「今だから言えることですが、アルフリード様にも苦手はございました。補佐をしていた私の父曰く、剣と魔法の腕は人外じみていても、領地経営に関しては我々臣下に頼るところも多かったとか。よくこまごまとした書類を書き間違えたり、失くしたりしては泣きついて来たものだと、酒の肴にこっそり教えてもらったものです」
「あの堅物親父がなぁ……。テレサにゃ聞かせられねえな」

 そんな話は初耳だった。親父は、俺や妹の前では徹底して威厳のある父親を装っていて、隙など見せることはなかったからだ。聞きたくなかったような……ほっとしたような心持ちでいる俺の肩を、クラウスは苦笑しながらぽんと叩く。

「反省は大いに結構。しかしあまりご自分を卑下されては、うまくいくこともうまく行かなくなる。あなたがお父上より強くなられるかは私には分かりませんが、少なくとも、アルフリード様の治めていた時代が最良だったかどうかというと、必ずしもそうとは言えません。隣国との(いさか)いもありましたしね……」
「…………ベルージ王国か。厄介な奴らだぜ」
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