魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ボースウィン領の北東部に領地を持つベルージ王国は、女系統治が進んでいる国として有名だ。なんでも、もう十代以上女王の君臨が続いているらしく、国政に参加している重臣たちも、ほぼすべてが女性で男性の地位は相対的にかなり低いと聞いている。そして彼の国はラッフェンハイム帝国を……というかボースウィン領をしつこく敵視している節がある。その理由は……。

「なんでも、彼の国の女王は強くてよい男がいると聞けば、自ら出陣しては狩り、力ずくで屈服させて自らの後宮(ハーレム)に繋ぎ入れてしまうのだそうですよ。おお、恐ろしや。そこにはそうして捕えられた美しく男が何百人と閉じ込められているとか。そして彼女は――」
「親父に相当入れ込んでたってんだろ。勘弁して欲しいぜ……」

 こうもしつこくボースウィン領にばかり攻め込んで来るのは、たまたま戦の場で一目惚れした親父を自らの夫にしたいがためだったという噂が、まことしやかに流れている。しかし……それは彼が没したことによって叶わず、葬式の際にも非公式で多額の弔問品まで送られてきて、以来襲撃はぴたりとなりを潜めていた。

 しかし近年になってその縛りも解けたのか、まるで調子を慣らすかのように、国境の付近でボースウィン領軍に対しての挑発行為を繰り返しているとか。
 いずれどこかで戦端が開かれるのは、女王の代替わりでもない限り避けられないだろう。
< 334 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop