魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「スレイバート様も、お気を付けられた方がいいですよ。国境線が破られてこちらまで攻め込まれたら、お持ち帰りされてしまうやも知れませんし」
「ふざけんな! だが……長年親父の代わりに国境線を守ってきたあの爺さんも引退だしな。また新しい遊び相手を見つけてやらねーと」

 今年で、北方の国境線をもう数十年以上も守ってきた名のある老侯爵が引退することになっている。すると、経験の浅いその息子だけに国境線の防備を任せるのは無理があるだろう。俺自ら出陣しなければならなくなる機会もあるかもしれない。

 ベルージの女王は魔法を使わず大剣ひとつで親父と争ってみせたという伝説の女傑だ。そんな化け物の相手を俺がやらされるのはごめんだし、そうなったら、クラウスのやつに全部押し付けて、俺は領地の奥地に逃げ込むとするか……。

「……今、私になにか面倒ごとを押し付けようと思いませんでした?」「気のせいだ」「ならいいんですが……」――そんなやり取りの後、嫌そうな顔で訝しみながらも、察しのいいクラウスは話しをまとめに掛かった。

「ともかく、私が言いたいのは、どんな偉大な統治者であれ、その功績は数々の地道な努力の先にあったもの。お父上が領地を引き継いだ頃も、今の状況とは程遠い、ひどい生活だったはずです」

 確かに、生前の親父でも、そういった敵対国家ベルージ王国の侵略や、セルベリア共和国との難民の身柄を巡った小競り合いなどもある中で、領民に完全に安定した暮らしを提供できていたわけではないのだろう。
< 335 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop