魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「閣下、もうひとつ大事なお話が。快癒の祝いと親睦を兼ねた宴に、イシュボア侯爵がぜひお越しいただきたいと」
「今は気乗りしねーんだがな……」
「そういうわけには参りません。父君の頃から懇意にしていただいている大貴族でありますし――」
「皆まで言うな。わーってるよ」

 ――クリム・イシュボア。先程ベルージ王国の話の時にもちらりと出てきたが、彼こそが、長年この帝国の北部国境線で他国に好きにさせないよう、睨みを利かせ続けてくれていた御大だ。個人的な恩もあるし、できれば顔見せくらいはしてやりたい。

 それにこの先を考えると……領主として、幾度となく負担を強いてきた国境付近の領民たちを見舞ってやり、士気を鼓舞しておく必要がある。

 断りようもなく、俺は渡された招待状に参加の署名を記して返す。
 それを恭しく受け取ると、クラウスはさらっととんでもないことを吐きやがった。

「ちなみに、ぜひ聖女と称されるシルウィー様のお顔もご覧になりたい、ということで。ご本人の了解は取っておりますし、ぜひ当日はご一緒にご参加ください」
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