魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「はあ!? そっちは断っても良かっただろ!」
「ご無理をおっしゃいますなあ。イシュボア侯爵は先々代の頃から国境線で指揮を執り、その名だけでも隣国の侵略を思いとどまらせていたほどの英傑。ですが彼ももうお年で、お身体の調子も良くないと聞いております。当地の行く末を憂い、次代の担い手たちを見届けてから引退したい……そんな偉大なご老体のささやかな願いを断れるものなので?」
「くっ……! ああもう、好きにしろよ」

 彼は今まで身を粉にして領地に尽くしてくれたし、俺も親父と一緒に向こうを訪れた時に、孫のように可愛がってもらった記憶がある。そんな風に言われて断れるはずがない。

「行きゃあいいんだろ。でも、こんなことで俺が考えを変えたりなんて期待すんじゃねーぞ」
「そうですか? そんなことを言っていて、意外とシルウィー様の方が先にいい方を捕まえてしまっても知りませんが……」
「野郎……」

 言い方にイラっと来た俺は、近くにあった手紙を丸めて投げてやったが、それはひょいと掴まれ、クラウスの手によって広げられる。
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