魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「おお、久しぶりにボースウィン公をお見掛けしたな。病床から回復されたばかりと聞いたが、それを感じさせぬあのお姿、やはりこの地を率いるにふさわしい」
「数年ぶりに見たけれど、若様は……いえ、ご当主様は本当にお美しいわねぇ。あの方と結婚できる女性は幸せ者だわ。あら……お隣の可愛らしいお嬢さんは、もしかして噂の聖女様?」

 場違い感の強さに、人々から視線が向けられるたび、つい耐え切れず、私はスレイバート様の方を見上げてしまう。

(ほ、本当に私なんかがご一緒してよかったんでしょうか……だ、誰か別のお方をお連れした方がよろしかったのでは)

 こういった集まりの経験もなく、口下手で気も使えない私なぞがこんなところに参加したら、すぐにぼろが出る。そんな女と一緒にいれば、スレイバート様にまで悪い印象が向きかねない。

 しかしたじろぐ私に高品質な微笑を維持したまま、彼は耳元でこう囁いた。

(なに言ってんだ。聖女って噂のお前が俺の庇護下にてレーフェルで暮らしてるっつーのは、とっくに公然の秘密なんだよ。なのにわざわざお前をひとりで来させてみろ。公爵家と聖女様は、実はあんまり仲がおよろしくない……なーんて憶測がばら撒かれるに決まってんの。貴族なんてのは、常に面白がるネタを探してんだから。それに……)
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