魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 スレイバート様の瞳が密かに不満そうな色合いを醸し出し始めた。

(今回は俺がお前を見立ててやったってのに、堂々としてもられねーってか?)
(そ、そういうわけじゃ……)

 彼の選んでくれたドレス一式はすこぶる上質で、滑らかな生地で出来たエレガントなパウダーブルーのドレスとシューズは、こんな私の身体でもさりげなく美しく飾り立ててくれている。クラウスさんにも素晴らしいと太鼓判を押されたくらいだ。問題なのは私の精神状態の方なのだが、その文句はここでは通用しそうにない。

 馬車に戻ってカメのように引きこもっているわけにもいかないだろうし、こうなれば覚悟を決めるしかない。

 それにひとつだけ安心できる材料もある。今、こうしてスレイバート様が普通に私と話してくれていること。

 ある意味仕事だということもあるのだろう。けれど、あんな出来事があった後で、ほとんど口も利いてくれないことも覚悟していた。これなら折を見て、また彼の厳しすぎる考えを改めてもらうように説得できるかもしれない。

 ルシドは今頃、スレイバート様と喧嘩した後熱を出しているテレサの看病をしつつ、己の鍛錬を積んでいることだろう。そう考えると多分どうせお店の方は休まざるを得なかった気もするし、丁度よいタイミングではあったのかも。
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