魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 あわやパーティー前の大惨事、といったところで私の身体はスレイバート様の見事なフォローによって、まるでダンスのように一回転。身体ごと彼の腕の中に収まってしまった。

 そんな私たちに周囲一同から「おおーっ」と、拍手喝采が起こり――

(なにやってんだバカ)
(す、すみません)

 こめかみをひくつかせるのと爽やかな笑顔を両立させた器用なスレイバート様と並んで私は必死に笑顔を振りまいた。

 見事アクシデントに対応した領主様と一言言葉を交わそうと寄ってくるお貴族様たちを生返事であしらいつつ、なんとか会場入りをはたそうとしていた私の耳に、密かな囁きが届く。

「これ、落とされましたよ」
「えっ? ありがとう――」

 さっと手元になにかを滑り込まされ、私が振り向くと、その背中はもう離れていた。後ろ姿も鮮やかで、派手な赤い髪の男性。そして握らされていたのは、見知らぬ高価そうなワインレッドのハンカチ。
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