魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 がやがやと騒めき出した会場内にて、引き続き私たちは歓談を楽しむ。

「ちぇっ、人をダシにしやがって」
「わっはっは、まあそう尖るな。子供のころあれだけ世話をかけさせたんじゃ。引退の祝いに顔を出すくらいのことはしてもらわんとな」

 このパーティーは、彼が任期を全うし侯爵位を無事退くことについての祝いも兼ねているようだし、スレイバート様も仏頂面を抑え気味にすると、グラスを一気に煽った。

「はぁ……んで、領地を息子に任せた後はどうすんだ。悠々自適に絵でも描いてのんびり過ごそうってのか?」
「……そうじゃのう。腰のせいで遠出はできそうにないが……長年見守ってきたこの地と人々を自由に描き残せるのが、こうして苛烈な戦場を生き延びたわしへの精霊様のご褒美じゃと思うことにしようかの……」

 侯爵様は満足そうに笑うと、利き腕でなにかを摘まむような仕草をし、すいすいと動かして見せる。そこでやっと、気付かされた私はもしやと彼に尋ねかけた。

「あの回廊に飾ってあったたくさんの絵は、侯爵様がご自身で手がけられたものだったのですか!?」
「クリムでよいよ、お嬢さん」
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