魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「顔立ちも性格も、マルグリットとはあまり似ておらんの。じゃが、確かにどこか彼女を思い起こさせる。そうじゃ……お主の家に、あやつの肖像画は残っておるか?」
「えっ……まさか」

 なんでそのことを……とクリム様に言われてようやく、私はあの懐かしさの正体にやっと気づいた。

「まさか……母の肖像画もあなたが描いてくださったものだったんですか!?」
「そうじゃよ。とはいえ、存命中にはでき上がらんかったが」

 彼は、母の滞在中にデッサンしたその姿を、後は記憶を頼りに数年かけて絵として仕上げていったのだと教えてくれた。ボースウィン領を彼女がいずれ再訪した時渡そうかと考えていたが、ついぞ機会はなく、母の死後ハクスリンゲン家へ寄贈する運びとなったのだとか。

「申し訳ありません。あの絵は実家から金目のものが運び出された時に、破かれてしまって。でも……私はずっとあの絵を見て、母の姿を身近に思いながら育ちました」

 そんなことを思い出し、鼻の奥が熱くなるのを堪えつつ私はクリム様に謝罪した。おそらく、今頃実家は人手に渡り、母の絵ももう失われただろう。持ち出せなかったことが本当に残念だ。
< 357 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop