魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 けれどそんな時間は長くは続かなかった。クリム様は今日の主催者なのだ。
 配下の方が耳打ちをすると、彼は申し訳なさそうに謝ってくれる。

「おっと済まぬ、他の招待客の相手もせねばならんでな。もう少しお前さんと話をしていたいのじゃが」
「こちらこそ、時間を割いていただいてありがとうございました。私はしばらくボースウィン領に留まるつもりですので、またいずれ」

 再会を約束すると、なんとも名残惜しそうな彼に笑いかけ、私はその場を退出していく。

「ふう、さてどうしようかしら……」

 重要な話を色々聞けて、思うよりも楽しい時間を過ごせたことに感謝しつつ、私は少しの間の暇をどう潰そうかと広間の出入り口近くに寄っていった。

 しかしやはり、あまり知り合いのいない土地でパートナーも居ないまま突っ立っているというのも中々心細いものだ。自分から声を誰かにかけるのも、勇気がいるし……。

 遠くからスレイバート様の方をちらりと見てみると、先程の女性と真剣な会話をしているようで、しばらくは戻って来れなさそう。
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