魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(どなたなんだろう。でも……幼馴染とか、元恋人とか、そういう人がいても不思議じゃないよね)

 美男美女がああして向かい合うと、とにかく絵になり、目が惹きつけられる。奥まったスペースで静かに話しているのに、そちらに視線を送る人はちらほらいるようで……。

(いいこと……だよね)

 若い男女がああして話していると、やはりこんな私でも、恋愛的な関係なのではと想像してしまう。いずれ、私との婚約が解消されるのならば、彼が自らの幸せに向けて次の相手を探そうというのは歓迎すべきことだ。自分からも言い出したことだし、私はそれを喜んであげなければならない。なのに……。

(なんだか、ちょっとだけ苦しくなってきたかも)

 私はどうしてか見ていられずに胸を抑えた。ちくちくした痛みともやついた不快感が胸の中にじわりと溢れ、息が苦しい。

(変な気分……)

 構われたいのに放置されているような、不満ともどかしさ……そんな嫌な気持ちがこうしているとどんどん込み上げてくるようで、これはよろしくないと、私はゆっくりと広間から脱出する。
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