魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 純朴さを残した笑みを浮かべる彼に伴ってリビングへ移ると、そこには素晴らしく栄養バランスの取れた食事が整っている。

「わ、美味しそう!」
 
 湯気を立てた具だくさんの野菜スープに、カリッとした焦げ目付きのベーコンとスクランブルエッグ。とろけたチーズがふんだんに乗った焼き立てのパンほくほくのポテトサラダ、デザートのフルーツ盛りまで……彩り豊かで身も心も満足しそうなメニュー群。

「さすがに、お城からシェフを呼び寄せるわけにもいかないので、質素なものですみません。お口に合うかどうかは分かりませんが、栄養だけはしっかり取れると思います」
「十分よ!」

 そんなルシドの謙遜に、私は目を輝かせながら(よだれ)がでそうになる口元をそっと抑える。
 ああ……昔の粗食で満足していた私はどこにいってしまったのだろう。あの頃の倍は有るボリュームだけど、なんなく平らげてしまえそう。

 生活環境が変わったせいか、最近そろそろ胴回りがぷにっとしてきそうで危惧している。何事も幸せとお悩みは表裏一体で現実は厳しいけれど、目の前でこうして胃袋を誘惑されたら、さっさとテーブルについてナイフとフォークを掴まないわけにはまいりません。
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