魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(今頃……スレイバート様はどうしてるかな)

 ふと、磨いていた銀スプーンの表面に、スレイバート様の顔がぼんやりと浮かんだ。
 結局事件があったことで、彼とはちゃんとした話もできなかった。この広い領地を守り抜くために、彼がひとりで何もかもを背負う必要なんてないんだと伝えたかったのに。

「どうかしました?」
「ううん……」

 せっかく、事件のことから心が離れかけていたのに、心配そうなルシドの瞳を見ていると、次はなぜだか先日の緑の瞳の美女が思い出されて……。

 スレイバート様にもいずれは新しい婚約者ができる。そうすれば、私との関わりはほとんどなくなってしまうだろう。そうなる前に……私は彼に感謝と――。

「――今、もしかしてスレイバート様のことを考えていませんでした?」
「えっ、どうして!?」
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