魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 きっとこのタイミングでまだよかったのだ。皇太子様自ら所望されたとなれば、婚約が取りやめになってもスレイバート様の名に傷はつかない。クリム様もボースウィン領の未来は明るいと保証してくれた。

 名残惜しくはあるけど……私にしてもおそらくこのまま帝国に飼い殺しにされるだけで、命を奪われることはないはず。この間狙われた暗殺者の手からも逃れられるだろうし、結構なことじゃないか。

 それにもし、ボースウィン領にまた瘴気騒ぎでも起こったりしたら。いつかまた少し彼らと再会するくらいなら、許されるかもしれない。皇太子様に従順でさえいれば……。

(また、いつか会えるわよね……)

 ひとりの黒騎士に腕を掴まれ、私は俯いたままその場を離れ始めた。そして、これだけは返さないとと、胸に揺れるペンダントをルシドに投げ渡そうと思ったその時――。

「ぐあっ!」

 くぐもった声がして黒騎士が倒れ、私の身体が引き寄せられる。

 そして――。
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