魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 だが、その時にはもうルシドはとんでもない速度で集団の中に割り込んでいた。稲妻のように鋭い身のこなしで黒騎士たちに近づくと、鎧を撫でるようにしただけで大きくへこませ、その衝撃だけで彼らを気絶させてゆく。

 もちろん相手にも魔法が使えるものは居たようだが、ルシドは魔力の集中を見てとるや失神した黒騎士の身体を盾に飛び込み、相手の動揺を誘ってやすやすと仕留めてしまった。

「つ、強い……」
「魔法で生み出した大気の振動を鎧伝いに肉体に叩き込みました。骨のひとつやふたつ砕けていても不思議じゃない。大切な部下なら、はやく治療させた方が良いですよ」
「くっ……」

 あちらの残りはもう指揮官ひとりだけ。

 静かな闘志を(たぎ)らせたルシドの表情に、圧倒された彼の踵が、じりじりと下がってゆく。

 だが――……。

「…………?」

 その足は途中でぴたりと止まった。
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