魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「お、お姉様……なにが起きましたの? なにこれ、お店が……燃えて」

 着の身着のままの彼女に肩を貸し、頭を低くしながら煙の充満しだす廊下を通って外へ。

 ああ……たった数ヶ月とはいえ、私の生活を支えてくれた場所が灰に帰ってゆく。
 でもそんな感傷に浸っている暇は今はない。ふたりして懸命に駆け抜け、火の輪のようになった入り口の扉へ――飛び込む。

「…………ぁ」

 そうして見えた光景に、私は絶句した。

 目の前には……ぼろぼろになったルシドの背中と、その首を掴み上げ、剣を突き付ける皇太子様の姿があったのだ。

「ルシド……そんな」

 いきなりの惨状に、言葉を失くしたテレサがその場にへたり込んだ。私はただただ硬直する。

「フン……かすり傷すら付けられんか。それとも我が玉体に傷を付けるのは恐れ入ったか? どちらにせよ……皇家に歯向かった時点で、貴様の運命は決まっていた!」
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