魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「――貴様ぁ……」

 だが……その行動は今度は私のうなじに向けられた銀の刃に妨げられた。振り返れば、そこでは煤に塗れた皇太子様が自分の頬をぐっと拭っていた。

「私の魔力を奪い、自らの魔法として放った、だと……? この身を汚したことも万死に値しようが……これはそれ以上の――貴様の存在自体が、帝国成立以来の大罪にもなりかねんぞ……!」

 私は無言でルシドを庇いながらも、地面に落ちた彼の剣を拾い上げて、自分の喉元に突き付ける。これが唯一の、交渉のタイミングだと思ったからだ。

「お願いいたします……! ここにいる人々の命を見逃してあげてください。私はもう逆らうつもりもありませんが……もしも彼らに危害を加えるなら、この剣で自分の喉を貫きます!」

 それを見た皇太子様は興味を失ったように吐き捨てた。
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