魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「そのような虫けらども、もはやどうでもよいわ。シルウィー、貴様の身柄はこのまま王都へと連れ帰る。その力の秘密、髪の毛の一片に至るまで研究材料とし、我が帝国の覇業の礎にしてやろうではないか。くくく……いったいどのような力が手にできるか、今から胸が高鳴る……」

 彼は私を欲望渦巻く瞳で眺めた後、ぐいと引っ張り上げた。

 なんとか、皆の命を救うことはできそうだ……。そして多分、これでボースウィン領とは本当に最後の別れになる。

 ……ずっと、幼い頃から魔法を使ってみたかった……それが、こんな形で叶うなんて。この地を訪れる前に運命が変わっていたなら……。

 いや、それでも……きっと私は幸せにはなれなかった。心からの望みがなかったから。

 でも、今は違う……ここにいる人達が、何のため……私がどんなことのために力を使いたいと思うのか、教えてくれたから。

「行かないで……」
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