魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ルシドの元に辿りついたテレサの、そんなか細い泣き声が聞こえ、歩き出そうとしていた私は動きを止める。でも、振り返ることはできない。そうしたらもう、このまま動けなくなってしまう。

「なにをしている。そのような下賤な者達との関係はもう要らぬ。お前にはこれから燦然と紡がれる帝国史を裏で支えるという、大いなる役目が待っているのだ。ただの雑草風情を、皇家に栄華を添える一華として認めてやろうというのだ! 迷うことこそが不遜なのだと知れッ!」

 痺れを切らした皇太子様が、強引に私を引き寄せようとその腕に力を籠める。でも……私は栄誉とかお金とか、そんなものどうだってよかった。少しでも長く、皆の側でいたい……。

「テレサ、ルシドっ……!」

 衝動で振り向いた私の長い髪を、皇太子様が罪人を縛るロープのように腕に巻いた。私は、抗うように両手を伸ばす。
 それに、どうしても――最後に一目見て、別れの言葉だけでも告げたい人がいる!

「くっくっ……そんなに自ら進んで辱めを受けたいというのならば仕方あるまい。このまま、これを綱がわりに、王都まで引き摺っていってやる!」
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