魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
『兄もルシドも、男の人たちって意地っ張りだから……。女がいると話せないこと、たくさんあるんです』
『……そうなのね』

 幼い頃からこういう場面に立ち会ってきて、彼女こそが、誰よりもふたりのことをよく分かっているのだろう。

 私も彼らがなにに憤っているのか知りたかったけれど、テレサは静かに扉を閉め……私を外に連れ出してゆく。

(私がここに来なければ、皆はこんな出来事に巻き込まれずに済んだのかな……)

 つい頭に浮かんだそんな考えは、テレサが私の手をぎゅっと握る感触に中断された。

『辛いこと、大変なこと……これまでも、たくさんありました。きっとこの先もそう。だから私たちは、悩んで、ぶつかって、時には無理やりにでも正解を決めないといけないんです。だから今回は……これできっと合ってるはず。私は誰よりも、あのふたりのことを信じていますから』

 その、自らの気持ちを抑え込んで言い聞かせるような言葉に、彼女もまた様々な想いを押し殺しているのだと悟る。

『……うん、そうだね』

 なら、私も彼らとテレサのことを信じ、皆の下す決断を待とう。全員の進むべき道がちゃんと定まった時、それをしっかりと受け止めてあげられるように。
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