魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 冬は飢えた魔物が街道で人を襲うことも珍しくなく、出現に警戒しなければならない時期で、もしそれを知らなければ大変なことになる。案の定十分な備えをしていなかった私達は魔物の襲撃で全滅しかけ、遠くで火の手が上がるのを見たスレイバート様は状況確認もせずに単騎で駆け出したのだとか。

 その後は知っての通り。私を助けたはいいけど彼は病のせいで力尽き、私たちは……。

「――――っ」

 襲い来る魔法の熱で背中を炙られた感覚を思い出し、私はぶるりと身を震わせて尋ねた。

「あっ、あの……それで、スレイバート様は?」
「ご安心ください、お命は無事です。本当に、シルウィー様が彼を守ってくださらなければ、とんでもないことになるところでした」
「そう、ですか」

 ルシドさんの力強い笑みに安堵した私が胸を手で押さえていると、「どうぞ」と言う声と共にカップの乗ったソーサーが差し出された。
 口をつけると、温かいお茶は丁度いい温度で、優しい味わいが驚くことばかりで疲れていた私の身体に染み込んでいく……。
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