魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 にもかかわらず……彼女はルシドの成長ぶりに喜ぶと、ほっとした様子でスレイバート様に感謝し、強く頼み込んだという。自分のことは大丈夫だから……どうかこのまま弟にはなにも知らせず、幸せに暮らさせてやってほしい、と――。

「――すまん」

 スレイバート様が、深くルシドに頭を下げるのを見て驚いた。
 プライドの高い彼がこうまではっきりとした謝罪の形を示すのは、ほとんど見たことがない気がする。

「お前だけの幸せを考えるなら……そして、アイリーン嬢の想いを汲むのなら、このことは一生墓まで持って行ってやるべきだった。だが……お前は俺の道具でもなんでもねえ。どうしても、自分で選ぶべきだと、そう思った」
「顔を上げてください」

 スレイバート様の肩に手を掛けたルシドの表情は、いつもの誰からも好まれる、柔らかく優しい笑顔だった。

「感謝しかありませんよ。あなたが話してくれなければ、僕はいつかひどい後悔で大事な人たちまで憎んでしまっていたかもしれない。あなたはずっと、僕の兄のような存在でした。最後まで、僕を強くしようとしてくれて、本当にありがとうございました……!」

 ルシドから差し出された手を、スレイバート様はなんともいえない表情でぐっと握る。
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