魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ルシド……」
「シルウィー様、あなたが、特別な力で僕の命を救ってくれたと聞きました。僕は……その」

 私が何を言えばいいのか分からずに固まっていると、ルシドの口の動きもぎこちなく鈍いものへと変わっていく。

「あなたといた時間は、とても楽しく、心安らぐ時間でした。元気になったスレイバート様と、あなたに甘えてべったりのテレサ様、それを近くで見ていて……なんだか僕は、まるで子供の頃に戻ったような気がして……ふふっ」

 けれど彼は、潤みが増した瞳を瞬かせ少しの間上を見上げると、何事もなかったかのように微笑んでみせた。

「あはは……すみません。でも、とても楽しい時間でした。……この先ずっと覚えています。この地で暮らした思い出も、あなたと出会えたことも、全部……」
「うん……私も」

 かろうじて私はそう答えると、手の中に包んでいた彼への餞別を差し出した。

「ルシド。よかったらこれ、受け取ってくれるかしら? 私たちで選んだの」
「えっ……なんでしょう。ここで開けてみても?」
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