魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 控えめなノックの音と共に、やや上擦った女性の声が響いた。

『――あの、失礼いたします』
「っと……少し外す」
「ふふっ、ごゆっくり」

 誰が来たかを察した俺がすぐさま立ち上がると、クラウスは野暮は言わずに軽く手を上げて見送るだけ。

 扉前に辿り着くと、板一枚を隔てて外にいる気配に少し胸の鼓動が速くなり――俺は静かに息を吸うと、軽く手鏡で身なりを整え扉を開けた。

「よ……よう」
「お、おはようございます」

 そこには、当たり前だが想像通りシルウィーの姿があって……。

 でも俺は、やっと向き合う覚悟ができたからか、久しぶりに真正面から見つめることができた彼女の美しさに、どきっとする。
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