魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「まあまあテレサ、スレイバート様にも面子というものがあるもの。一応婚約者という立場である以上、自分の傍に置いていてなにかあったら、公爵家の評判に関わるじゃない。その内きちんとしたお相手が見つかれば、自然と私なんて眼中にも入らなくなるから、大丈夫よ」

 私は朗らかに笑ってみせたつもりだったが……それを聞いたふたりは、なぜか後ろを向いてこそこそと内緒話を始めてしまうのだった。

(……お兄様、本当に大丈夫ですの? お姉様ったら、未だに完全にこの婚約は成立しないものだと決め込んでいますわよ? 鈍いというか、自己評価が低すぎるというか……)
(わーってる、わーってんだが……俺もこいつにどういうタイミングで説明したか分からなくなっちまってんだ。もう少しだけ、待ってくれ……)
「どうかしました?」
「「いや(いいえ)、なんでも」」

 頭を押さえてがっくりと肩を落とすスレイバート様を冷たい視線で一瞥したテレサは、軽く溜め息を吐くと、満面の笑みでまた私の腕をしっかりと捕まえた。

「お兄様には考える時間が必要みたいですし、そろそろ氷魔法の訓練はお終いにして……次は私の治癒魔法の練習に付き合っていただいてもよろしいですよね?」
「えっと……いいでしょうか?」
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