魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「大丈夫?」

 ついそう尋ねると、テレサはぽかんと口を開けた後、にっこりと笑ってみせた。そして、私の手をぐいぐいと引っ張りながら上機嫌で駆け出していく。

「なんにも心配ありません、皆それぞれ目標に向けて頑張っているんですから! なにより、お姉様と過ごせる貴重な時間ですもの。他のことを考えて、一秒たりとも無駄にするわけにはいきませんわ……!」
「分かったから、落ち着いて……!」

 転げそうな足取りを慌てて立て直しながら、私はいつも以上に明るく振舞うテレサを、無理をしていないか注意深く観察した。

 出会った頃は公爵令嬢然とした落ち着きが目立っていた彼女。でもスレイバート様の呪いが解けてからは、少しは重圧から解放されたのか、こうして年相応の少女らしい姿をよく見せてくれている。

 今もきっと、幼馴染だったルシドが生まれ故郷へ帰ってしまった悲しみを、ふとした瞬間に味わっているのだと思う。それでも私たちに暗い顔を見せまいと気を張っている姿はとてもいじらしいもので……。

(早く、また再会できますように……)
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