魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 男性陣ふたりの声が重なり、ふたりはお互いを見合った後、再度振り向く。その反応に恥ずかしくなった私は、しどろもどろになりながら弁明した。

「そ、それがですね。実家では、そもそも誕生日という行事の存在がなかったのです……」

 そういうものがあるというのはメイドの話で聞いていたが、いかんせん、父親がアレなもので……。私についぞそれを体験する機会は訪れなかった。加えて、その日が母親の命日であることも影響して……毎年実家は死んだように静まり返っていたという。

「最悪じゃねえかよ……」「なんと、おいたわしい……」

 スレイバート様が奥歯をぎりっと噛み締め、クラウスさんはハンカチで涙を拭う真似をする。そんな姿を目にしながら、私は(ちまた)で聞いた話から、頭の中で誕生日というものがどのような行事なのかを空想し始めた。

(蝋燭を立てたケーキとプレゼント、暗闇の中で火を灯し、大勢の人が歌を歌いながら祝う、だったっけ? ええと……こんな感じ?)

 以下が、私が思い描く誕生日の姿だ。
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