魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 たくさんの人が夜、暗闇の中大きな広間に集う……。その中央には巨大ケーキが用意され、参加者は立てられた蝋燭に一本一本火を灯していく。それをすべて終えると、暗闇の中巨大な焚火のように燃え盛ったケーキの前で、全員が厳かに歌を唱和し……誕生者の生誕を祝う呪文を唱えるのだ。そうしたら……蝋燭に立ち昇る火の中から、なにかが現れ……!

「ひぃ……ダメです! テレサの魂を売り渡すわけにはいきませんから!」
「……言っとくが、多分お前の想像とはまるで違って、んな儀式的なもんじゃねーからな。ったく、知識が魔法に偏りすぎてんだよ。誕生日っつうのはなあ、単に仲のいいやつらが集まって、そいつが生まれたことを歌で祝ったら、後は皆でケーキを食う、それだけだ。プレゼントなんか贈ってやると、なお良しだな」
「そ、それなら、私も気兼ねなく参加できますけれど……どうしてケーキなんです?」
「さあ、ご馳走だからじゃねえ? 古くは、月に住んでる精霊に子供の守護を頼んだとかいう説もあるが……」

 どうやら妖しげな内容ではなく、もっとフランクなもののようで助かった気分だ。スレイバート様はそんな私を冷ややかな目で一瞥すると親指で差し、クラウスさんに告げた。

「ま、そういうことだからクラウス、次からは盛大に城を挙げて祝ってやるから、こいつの分もきっちり予定を組み込んでおいてくれ」
「……承知いたしました」
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