魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 強引に話を打ち切られ、なにがなんだか分からないまま、私は手を動かす。
 ちらりとクラウスさんの方に目配せすると、彼も呆れ顔でしかし――心配する必要はありません――と言うかのように首を左右に振ってくれた。

 ――婚約の解消はしない。

 それはすなわち、スレイバート様が少しでもこちらに好意を持ってくれていると、自惚れてもいいのだろうか……?

 いやいや――と、そんな考えを私は即座に否定する。

 彼は周りにいる人を大切にし過ぎるきらいがある。だからきっと、こないだ私が皇太子様に襲われ窮地に陥ったことと……あの長年伸ばした黒髪をばっさりと落としてしまったことを、必要以上に重く捉え、勝手に責任を背負い込んでしまったのだと思う。

 でも、それは自分の面倒を見切れない私が悪いのであって、彼が悩む必要のあることじゃない。ならば私が今一番すべきなのは、一日も早く自分の身をひとりで守れる力を身に着け、それをスレイバート様に証明することだろう。

(今はまだ、魔力を誰かから借りるしかない私だけれど……きっとなにかいい方法があるはず。今のうちにたくさん魔法の練習をして、自分なりの戦い方を見つけるんだ。誰にも心配をかけなくて済むように……)
< 465 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop