魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 彼女は精霊教会には属していないものの、ボースウィン公家が特別に認定した治癒魔法士として、領の各街にある治療院を日々代わる代わる巡っている。なんでも、十二の頃からそれを三年以上も続けているというのだから、聞くだけで頭の下がる話だ。領民のボースウィン家に対する信頼が大きいのも、こういった行動の積み重ねであるのだろう。

 感心しながら彼女とともに目的の治療院に辿り着くと、そこでは多くの働き手のみならず、大勢の患者たちが詰めかけて温かく出迎えてくれる。ものすごい歓迎っぷりだ。考えてみれば、彼女はこの巨大領地を治めていた前公爵の娘……いわゆるお姫様のようなものなのだから当然ではあるのかも。

 幸い、どこにも緊急で治療するような大きな怪我人はなく、軽い相談と挨拶程度で訪問は終わった。
 それでもいずれの院でもテレサはひとりにひとりに心を砕き、丁寧な言葉をかけていて、私はずっと感心しきりだった。

「皆テレサが来るのを心待ちにしていたわね。私までなんだか嬉しくなっちゃった」

 外でまで見送りに出てくれた看護人や患者たちの姿に目を細めていると、テレサは馬車に乗り込むまで、ひとりひとりの街人たちの表情を焼きつけるようにじっと眺めていた。
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