魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「一緒に暮らしたい気持ちはもちろんありました。けれど、今ではきっと理由があってこちらを離れたんだと納得しています。だって……お母様がお父様のことを話す時、例えようもなく切ない顔をされるんですもの」

 そして、彼女はスプーンを静かに置くと下げていた眉尻を戻し、明確な笑顔で言い切った。

「勝手気ままなのは否めませんが、私にも兄にも気さくに接してくれる数少ない人で……どうしても憎めない、大事な母です」
「そう……」

 その含みのない表情から欠片ほどの憎しみも感じられないことに、私はほっとした。

 確かに、母親と言えどひとりの女性で人間だ。テレサを残して領地に帰ってしまったことは誉められたことではないのかもしれない。けれど、一番身近な娘であるテレサ自身がそれを許し、大切な家族の一員とだと受け入れているのだから、きっとそれでいいのだ。

「私もまたいつかお会いしてみたいわ」
「はい、いずれご紹介させていただくかと思います! それで、あの……」

 そこで、なんだか言いづらそうに口籠ってしまったテレサを見て、私は彼女が躊躇うその内容をなんとなく察する。
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