魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 どうやらこれは、テレサに実母との交流の時間をなるべく与えてやりたいという気遣いでもあった様子。たちまちテレサの顔が輝き、やや照れた顔でスレイバート様が私を呼ぶ。

「ってことで、シルウィー、お前もテレサの母親と顔合わせしてきな。なに、別に取って食うような人じゃねーから安心しろ。それと、できたらいいから、このバカが移動中に仕事してないか、監視しててくれ」
「わ、分かりました」

 思いもよらず重要な役割を仰せつかった私が気合を入れる隣で、クラウスさんは指折りブツクサとぼやいている。

「あれも、これも……。私はこれから色々と大事な仕事が控えてるんですけどねぇ……」
「だからこそだろ。セルベリアとの交渉がすんなり運ぶかどうかもお前の手腕にかかってんだから。わざわざこないだ俺が王都に出向いて根回ししてきた分、きっちり締めてくんねー困る。そのためにも、この旅行でしっかり英気を養ってこい」
「仰せのままに。ふ~……正直手を動かしていた方が気が休まるんですがねぇ。うーん、それにしても、そんなに疲れてるように見えますか? 体調は元気なんですが……年かな」

 瞼の隈さえ取れれば精悍な美男子と言って差し支えない顔を揉むと、クラウスさんはなにやらスレイバート様にぼそぼそと忠告する。
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