魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「シルウィー様がおいでになりましたよ」
「…………う、ん……。……来た、か。悪い、少し寝ていた……」
「スレイバート様、お背中を失礼します」

 ルシドに支えられた彼がゆっくりと身体を起こすと、その手元にテレサが水を滑り込ませた。彼はそれで口を湿すと、ゆっくりと瞳を開け、こちらを見る。

「そうだったな……俺は……」

 精緻なカットをかけられたアメジストのように、複雑な光を湛えた神秘的な紫の瞳。あの時も思ったが本当に綺麗だ。見ているだけで魂が吸い込まれてしまいそうな――。

 私はただ夢中で……彼は訝しそうな顔をこちらに向けて。
 しばらく彼と私は見つめ合った。

「「…………」」

 そのまま長い時間が経ち――。
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