魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 すると、少しずつ傷口の外側から桃色の真新しい皮膚が覆ってゆき、二、三分で怪我していた部分を完全に覆った。後は強く動かさなければ大丈夫だろう。短い時間だったが、気が付けば私の額には緊張で汗が浮かんでいた。

「しばらくはひりひりするかもしれませんが、安静にして治りを待ってください」
「あ、ありがとうございます!」「お姉ちゃん、ありがとう!」

 治療が終わると母親から大きく頭を下げられ、少女が笑顔で私の手を握ってくれた……これは嬉しい。

 それからも、私は比較的軽い火傷や打ち身などの痛みを、時に治療院の看護人たちに手伝ってもらいながら取り除いていった。そんなに大きな善行ではなく、魔法でなくても時間を置けば治る傷がほとんどだっただろうが、それでも……こうして対面で誰かの喜ぶ顔を見ると、胸が温まる。

 次第に手際も上達し、張り切りすぎたせいか、大体二時間もしない内に待合の患者の列は消えてしまった。最後に額に傷のできた女性を癒して見送ると、もう仕事がないことを確認し、私は診察室を後にする。

「おお、お疲れ様でございました。領民たちも喜んでいたようですよ」
「クラウスさん。待っていてくれたんですか?」
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