魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 扉の脇で待機していたクラウスさんから声が掛かった。

 どうやら彼は見張りを兼ねて部屋の外で立哨していてくれたようで、文官らしくない敬礼のポーズは意外と様になっている。
 その後テレサの様子はどうかと聞くと、彼は肩を竦めて言った。

「魔物からの襲撃を、命がけで防ぎ留めてくれていた戦士たちがいたようでね。さすがのテレサ様といえど、もうしばらくはかかりそうですよ。なんでしたら、どこか休めるところがないか聞いてきますが……」
「そうなの……。ううん、それより私もなにか手伝えることはないかしら」
「聞いてみましょうか」

 自分だけ休む気にもなれず、クラウスさんに頼むと彼は院の看護人たちに治療中の部屋に入れてもらえるか聞いてくれた。聖女様の頼みならと彼女たちも快く応じてくれて、私たちは邪魔にならないよう、そっと重症患者を処置中の室内に足を踏み入れる。

 少し離れた場所から見守ることにしたが、さすがの集中力でテレサは、こちらに一瞥もくれず傷口と真剣に向き合っている。その両手の先では、ざっくりと半分ほど裂けた患者の大腿部があり……それを彼女は丸い結界のような魔法で覆い、内部に生命の光を送り込み続けているようだった。きっと私の使った初歩の魔法などより何十倍も高度な技を使っているのだろう。

(すごい精神力。あんなにひどい傷なのに、眉ひとつ動かさないで……)
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