魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ハハッ。おっさん、すっこんでたほうがいいぜ? オレの目的はあくまでそいつだけだ。魔法を使えそうな様子もねえし、見たとこ、ただのお目付け役なんだろ? 尻尾撒いてとっとと消えな。年喰ってから骨でも折っちまうと、治りが遅いって聞くぜぇ?」

 挑発じみた言動を発しつつ、青年は犬でも追い払うように手を払い無造作に歩み寄ってくる。
 対してクラウスさんは――。

「それについてはご心配なさらず。後ろに我が領が誇る二大聖女が控えてますのでね、治療はお手の物なんです……。にしてもやれやれだ……元気な若者の相手をするのは疲れるから嫌なんですが、ま、世間知らずの鼻っ柱を叩き潰してやるのも大人の務め。かかってきなさいよ、クソガキ君」

 あくまでにこやかに挑発し返すと、腰の剣をすらりと抜いて、ちょいちょいと指を内側に振る。

「テメェ……」

 青年のこめかみが引くつき、足音が荒っぽさを増した。青ざめた私はテレサの肩を揺すって忠告する。

「テ、テレサ……今のうちに誰か別の人を呼んできた方がいいわ。た、たしかにあなたが怪我を治してあげることはできるだろうけど、時間稼ぎだけじゃ……」
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