魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「――困りますねぇ」

 呑気な声と共に、どさっとなにかが投げ出される音――。
 それ以降、なにも起きない。

「えっ……?」

 私が顔をおそるおそる上げてみると、先程までの暴走の気配はぴたりと止み――そこでは青年の背中を踏みつけにし、剣先を首筋に当てたクラウスさんの姿があった。

「う……ぐ……。なにを……しやがっ……た」
「まだ口を利けるとは、つくづくタフな人だ。でもですね……そんな自殺行為くらいで要人を殺せるなら、帝国の歴史は幾度となく変わっていますよ」

 クラウスさんは、平時と変わらぬ冷静な口ぶりで、彼を行動不能にしたまま講釈を垂れる。

「あなたの魔力は素晴らしい量だ。しかし、身体強化術や防御魔法と、広範囲に影響を及ぼす多くの魔法は同時に使えない……それくらい誰だって知っていることです。魔力を身体の中に留めていては、魔法は発動できませんからね。ゆえにそんな自爆技、ある程度の速さと道具があれば、さっさと近づいて身体のコントロールを利かなくしてしまえば無力化できる」
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