魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 順当にいきゃあ公爵家の次男坊、適当な貴族の娘との縁談が来るところだが、俺の場合は出自が出自で、親父も別にそれを隠そうとはしなかったから、ろくな縁談も来やしない。

 嫡男である兄のエルハルトとは違い、自分の将来について特に目的も見いだせなかった俺は、とりあえず身体だけは鍛えておいた。相変わらず妹のカヤは身体が弱く、十歳を超えてもひとりでは出歩けない。ならば、俺がその分の手足になってやる。妹に、いつか広い世界を見せてやろう――そんな想いで日夜、城内の騎士に混じって鍛錬に励む。

 その内に自分に魔法の才能があることが分かり――それは母方の血筋のものだったようだが――俺はそれも自らの力に加え、親父たちがなにも言わないことにこれ幸いと、カヤの専属護衛のような立場を貫き通した。

 カヤもカヤで、度々熱を出して倒れたりしながらも性懲りもなく、毎日一生懸命手足を動かそうと頑張っている。その努力は実ってわずかずつだが身体は丈夫になってきて、少しの時間なら、外にも出て太陽の日を浴びることができるようになってきたんだ。

 努力ってのは、オレ達みたいなやつでも見放さないでいてくれるんだな……散歩に出た城の庭の花畑で、そんな風に気を良くしていたオレに、ある日妹は自分の夢を明かした。

『お兄ちゃん、私叶わないのが怖くて言えなかったけど……いつかお薬の研究がしたいの。魔法で治せない、私みたいな病気の人を治療して、生まれてきた意味を感じさせてあげられるように』
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