魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ――苦い記憶により再燃した恨みに、ディオニヒトは手の内をグラスごと握りつぶした。青い炎の魔力がガラスを溶かし、その飛沫が絨毯までも焦がす。

「やつだけは……スレイバートだけは許せぬ! 私を侮辱したばかりか、帝国史に燦然と刻まれたはずの我が戴冠の儀を遠ざけようとは……まさに国を内から荒らす害虫! 必ずやつとシルウィーには、生まれたことを後悔するほどの罰を与えてやる! 待っていろよ貴様ら! ふ、ふはっ、はははははは――!」

 ――皇太子はそれからも狂ったように哄笑を続け……。

(清々しいほどの傲慢さだわ。少なくとも、この男が他者の気持ちを理解する時は、永遠にこないでしょう。己の意に添わぬものはすべてが悪。神様気取りの勘違い男……だからこそ、一番操りやすい)

 こんな人間が力と容姿だけで上に立てる、国というものの愚かしさを見届ながら……一方のヴェロニカはさて、と些細な疑問を頭に浮かべた。

 精霊に巣くわせていた呪いがアルフリードに移り、それをスレイバートが引き継いだところまでは、ヴェロニカの想定内。そのままいけば、領主の死後ボースウィン領は常時瘴気の被害に晒されると同時に、敵国から攻め込まれて遠からず崩壊していたはずだ。
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