魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
『ベリカ、もうやめよう……? いつまでこんなことをするつもりなの……?』
(シリカ……)

 遠い記憶の中に封じられた、ある少女に呼びかけられた気がして――ヴェロニカは醜く顔を歪めた。

 ともかく……離れた他人から強引に魔力を奪い、それを自らの魔法に変えて放てる存在など……永き時を生きる、彼女ですら聞いたことがない。

 だが、彼女がもしそうした能力を手に入れたというのならば、今回起きた事象にもある程度の辻褄は合ってくる。

(シルウィーが、スレイバートに巣食った呪いを、闇の魔力として自分の中に取り込んだ……ということ? ならば、呪い返しが来なかったことにも説明がつく。となると……あの呪いは解かれたわけではなく、彼女の身体の中で、なんらかの状態で存在している?)

 国内最高峰の聖属性魔法士でも解呪が不可能――かつ、あの呪いは傾くかの地の民や、アルフリード、スレイバートと二代に渡る公爵たちの苦痛を存分に吸って成長していた。そんなものを身体に取り込んで普通なら無事でいられるはずがない。
 しかし、あの時のシルウィーの様子に病的な不調の影は見当たらなかった。

 一見不可解に思えるこの状況……ただし、その理由にも唯一心当たりがある。
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