魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 どう足掻こうと、失われたものは還らない。会ったことすらないのに、長い間心のどこかに居座り続ける、私の母のように……。

 今この時も、少し離れた隣の土地で。
 会いたくても会えない――そんな想いを抱える人が続々と増えているのだとしたら。私は……それをどうしても止めたい。

『はぁ…………。お前本気で、最悪に意固地な女だな』

 スレイバート様がガジガジと頭を掻くと、私を射抜くように見つめた。
 それでこちらの覚悟が変わらないことを見てとると、クラウスさんに告げる。

『つーことだ。もう面倒くせえ、テレサも連れていくからお前、ひとりで城へ帰れ』
『正気ですか!?』

 両手で顔を押し潰しながら絶叫するクラウスさんを追しのけ、スレイバート様はラルフさんの首根っこを引きずり出すと、私に付いてくるように指示した。

『こんなやつでも領内の道案内くらいはできんだろ、他領の人間との顔つなぎ役が()るしな。シルウィー、絶対に俺から離れんなよ。言っておくが、どうにもならねえと俺が判断したら、気絶させてでも連れ帰るからな』
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