魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
『は、はい……!』

 それで十分だと、翻るスレイバート様の背中を追いバタバタと慌ただしく去ってゆく私。

 するとその後ろからは、『だーっ、もう知りませんからね! 無事戻ってきても、ボースウィン領はノイスラ―領に改名して、あんたらまとめて指名手配にしてやる! このお人よしの大アホどもーっ‼』という、怒り心頭のクラウスさんのわめきがぶつかってきた……。



 そうして今、私たちはこうしてひとつの馬車の中に集まっている。
 向かいの座席ではスレイバート様が苛立たし気に足を組み替え、隣では精神を磨り減らした様子のテレサがぐったりと私にしなだれかかっている。
 そしてラルフさんは相変わらず身体を鎖で縛られた状態で、無力感を身体全体で表すように、後部にある荷物置き場に転がっていた。

「テレサ……大丈夫? 向こうについたらすぐにお母さんを探しましょう」
「……はい」

 いつもは公爵令嬢然として凛々しい彼女の姿も、今は見る影もない。
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