魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
『ラルフをもし見つけたら、許してやれ。くれぐれも兄弟で憎しみ合うようなことはするなよ。後は頼んだ、エルハルト!』

 そう言って背中を叩くと微かに笑い、ルーファウス様は兵の指揮を執るために、廊下を駆けだした。それが生きている彼を見た、最後の姿だったという。

 その後、ルーファウス様は変容した城の内部で、騎士団の一隊を連れて奔走し、多くの住人を助けると、外に逃がしていったのだそうだ。

 エルハルト様もその決死行に付き合いたかったが、父の言葉が彼の行動を縛った。結局、残った騎士団の部隊を纏めあげ、住処をなくした人々を近隣の集落に送り届けることに専念していく。

 その内に、瘴気の濃度はいよいよ魔法士であっても立ち入れないほどに増し、城の内外は丸太のように太い紫色の植物で取り囲まれ始めた。中には得体のしれない植物型の魔物がうろつき、日ごとに、内部から感じる人の気配も消えていった。

 そして二日も経った頃……ようやく住民の移送も終わり、城内への突入を話し合っていたエルハルトさんたちの前に姿を現したのは、数十名の騎士達と百人以上の生き残りだったという。騎士達が背負ってきたその亡骸に、彼は言葉を失くした。

『ちち、うえ……』
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