魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 背負われていたのは変わり果てた姿のルーファウス様だった。彼は城内の奥まったところに立て籠もり、救出を待っていた人々たちを助けるため、力尽きる直前まで魔力を振り絞り続けていた。そうして生存者を守り抜き城壁の外まで送り届けると、そこで崩れ落ち、事切れたという。

 その顔にはやるべきことを成し遂げた人間の笑みが浮かんでいた。周りの騎士達は、彼が何度も、「ここから出れば、後のことは息子たちが必ず何とかしてくれる。そして、お前たちは私が必ず助ける! だから、安心して力を出し尽くせ!」と全員を鼓舞し、死力を尽くして自分たちを守ってくれたのだと啜り泣いた。

 そんな父の意志を無駄にはできず、これ以上の犠牲は出すまいとエルハルトさんはリュドベルク城を放棄する決定を下した。
 父は死んだ……ならば今からは自分がその代わりとなり、領民たちのすべての命を守る責任を追わなければならないと自覚したのだ。

 そして彼はリュドベルク領の立て直しをはかるため、避難民を守りながら……城から大きく離れ、まだ魔物の侵攻もまだ及んでいないこのセイムルークへと退いて来た、ということだった。

「やっぱり……親父は――」

 首から手を離され、どさりと尻餅をついたラルフさんの声が、静寂に染み込んだ。
< 570 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop