魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ああ、そうさ。お前が眉唾の話を聞いてどこかをほっつき歩いている間にな! お前がいたなら……民たちの避難は任せて、父上の命はなんとしても私が守り抜いてみせた! 父上が、亡くなったのはお前のせいだ、ラルフ!」
「…………くっ」

 エルハルトさんの言葉に強く責任を感じ、肩をがくりと落とすラルフさんを私が支え起こそうとする間、「そこまでにしとけ」と再びスレイバート様が仲裁に入った。

「まあでも……あんたらは、忠告に来た怪しげな女の言葉を信用しなかったようでなによりだったぜ。そうなりゃこっちと戦争になるところだった」
「ええ……。父は言っていました。『他人に誰かの命を奪えと唆すような輩が、真実を語っているとは思えない。穏やかで上品な様を装おうと、あの者からは隠し切れぬ後ろ暗さを――闇の気配を感じた』と。あの人は親としての情は薄かったかもしれないが、尊敬に値すべき誠実な人だった。だから私はそれを証明するため、今後ずっと父を模倣するような生き方を辿ることになるでしょう……」

 それは自らの意志を捨ててでも、この領地と民のために尽くしていくのだという悲痛な宣言に思え、私は胸を痛めた。エルハルトさんの目がこちらに向いた。

「黒髪の――。もしやそちらが、あの怪しい女が語っていた聖女なのでは? ふふ……だとしたら、やはり父の目は正しかったのだろうな。そんな策を(ろう)すような人物なら、馬鹿正直にこんなところにわざわざ顔を出しはすまい」
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