魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「おお……感謝する。今はまだなにも返せるものはないが、いずれボースウィン領が窮地に陥った時は、必ずご恩を返すことを約束しましょう。弟がなにをしたかは察しがつきます。私からもこの通り謝罪を……」
「いいえ、緊急時のことですし、事情を聞いて彼へのわだかまりは解けましたから。ボースウィン城預かりの、シルウィー・ハクスリンゲンと申します。それより……」

 そこで私は軽い自己紹介をすると、これだけははっきりさせておかなければと尋ねた。

「辛いことを思い起こさせて申し訳ないのですけど……カヤさんは、どうなってしまったんでしょうか」

 すると、エルハルトさんは瞼を閉じて、首を俯けた。

「率直に言えばわかりません。直前までに、呪いの黒い痕は妹の身体の大半を覆い、誰もがもう先は長くないことを感じていました。その後すぐ城に騒ぎが起き、結局妹の死を看取った者はいない。父の最後に立ち会った騎士も瘴気のきつさであの部屋には近づけはしなかったと……。だが、状況からすれば生きているはずはない……私にとってはそれがすべてです」

 その言葉の端に後悔を滲ませながら――彼は深く頭を下げ、今後のことはまた後で話し合いたいと私たちに会合の約束を取り付けた。
 その後、ラルフさんを冷たい目で見据える。

「その格好、どうせこの方たちをつけ狙って襲撃し、捕らえられたのだろう! その軽はずみな行動、お前をもう、二度とリュドベルク家の者だとは認められん! お前などは、この領地に生きる資格もない! どこへなりと消えるがいい! では、失礼……」
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